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森は暗いメランコリアでひんやりと冷えている。*雨の夜のシャルロット・ゲンズブール2*

森は暗いメランコリアでひんやりと冷えている。*雨の夜のシャルロット・ゲンズブール2*_b0072051_1393690.jpg




日曜日 夜から雨。

東京国際フォーラム ホールA

シャルロット・ゲンズブール東京公演。



チケットは、センター列の前から17列目で、

こんなに(バランスの)いい席ははじめて。

すぐちかくにNHKのカメラがあった。



そして、ミュージシャン、ジャーナリストが、ちらほら周辺に。


ちょっと前には、片寄さんと、ショコラさんのgreat3夫妻。

一列前には、小山田さん、嶺川さんのコーネリアス夫妻。


前にも、書いたけど、小山田さんとは、高校の同級生で、

学祭でわたしが、風船をふくらましていたら、
小山田さんが、「このギター、ここに預かってもらってもいい?」
と聞いてきて、「いいよ」と答えて以来の接近遭遇。

その後、小山田さんは、ずっとギターをひいていて、
最近オノヨーコさんのバンドを手伝っていて、
競演してたのは、エリッククラプトン、レディガガ、
RZA、ソニックユース、そして、ペリーファレル!!
あ、YMOも手伝ってる。


で、わたしは、ずっと風船をふくらませてる。。

(↑どうでも情報。。どうでも比喩。。)



開演までのBGMは、

わたしの大好きなカーティス・メイフィールドの
フューチャーショックがかかった。
このスネア、なんてデリカシーがあるんだろ。

デビッドボウイ、ルーリード、

そして、そして、ジャクソンファイブの

i want you back が大音量になって、開演。








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すごい、かっこいい。


音楽も、かっこいい。


ぜんぜんCDで聞くのと違う。




照明は、レディオヘッドのスタッフで、
バンドは、ベックのバンドで、
曲は、ベックとか、ジャービスコッカーとか
エールとか、

なんだけど、ちがう、

これは、シャルロットの音楽だ。



お父さんのゲンズブールを亡くした
深い喪失感と、コンプレックスで、

(実質的な)ファーストアルバムは、フランス語を
いっさい使わずにつくったくらいのシャルロットが


「(エルメスの)バーキンは、わたしがもっても
(母の)まねになっちゃうじゃない?」
って言っていたシャルロットが、


この時代に自分で手にいれた音楽。


レディオヘッドと、ベックと、エレクトロニカの時代の
同級生の音楽。


うわーこれ観れてよかった。


だって、中盤、なんの気負いもなく、
セルジュの超名盤「メロディーネルソン」から、
「L'HOTEL PARTICULIER」のカバー。

ギターのカッティングがすごくかっこいい。


これは、ジェーンバーキンは、カバーしないなあ。


シャルロットの志向する音楽と、とても合ってる。

すごい絶妙。自分で探した音楽が、

カリスマだった父の音楽と別の道を辿って、同じラインにたどりつく。




シャルロットの曲は、コーチュラとかも出てるだけあって、

CDより、メロディや、コーラスを厚くして、ライブ向けに強調している。



このメロディが、とても暗いメランコリアがひろがるようで、すばらしい。




あの時を、思い出した。


重たく曇ったノルマンディの海岸から、

南下して、ブルターニュにクルマで向かう途中、

すこし、道に迷った。


人気のない村、石がごつごつとあって、
草が冷たくそよいでいて、ほこりっぽい細い道で

クルマをUターンさせているとき、

急にケルトの音楽というものが判った気がした。

地図のルートからはずれた生身の土地で、

土地のもつ北ヨーロッパの響きのようなものが理解できた。



賛美歌や、教会の音楽も、急にひもとけたように思えた。



シャルロットの暗いメランコリアは、

北の土地の森が見えて、教会の響きを感じた。



シャルロットは、限りなく細く、スマートで、

やはり、限りなく、シャイだった。



曲の合間、ペットボトルの水を飲む時、

必ず、後ろを向いて飲むところ、


はにかみながら、

「フランス語でしゃべってもいい?」

って観客に聞くところ。



彼女は、素晴らしくシャイなままで

この時代のメランコリアを、次々に響かせていた。




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すわって、ゆっくりと、のびやかにはじまったのが、

ボブ・ディランのカバー、just like women。



今年は、ライブで聞くの二度目。


一度目は、ゼップ東京のボブディラン。

二度目は、国際フォーラムのシャルロット。


なんていう年なんだろ。






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バンドは、きちんと血がかよっていて、

だけど、激しく、オルタナティブで、

いろいろなところに連れていってくれた。




開演まで、人気のなかったCDの販売コーナーが、

終演後、すごく混み合っていたのが、象徴的。






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ラストは、とてもかわいらしくシャイにメンバー紹介をして、

サンバのドラムと、あのベースライン。



セルジュの、couler cafe。



サビでみんなで合唱。



最後は、スタンディングオベーション。




こんなことがおこるんだ、

ということが、人生には、時々、平気でおこる。






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シャルロットの好きなところは、


くだらないものを、守っていなさそうなところ。


くだらないものに、執着していなさそうなところ。


くだらない、プライバシーとか。


くだらない、自意識とか。




なにかの奪い合いや、

競い合いや、

貧しい心持ちとは、別の場所で、


森は暗いメランコリアでひんやりと冷えている。



はるかとおくに、その森がある。



わたしは、その森とつながっている。




深く眠ることができて、

深く目覚めることができる森とつながっている。




そんなふうに思った。



雨の夜のシャルロット・ゲンズブールを観て。
by ayu_cafe | 2010-10-27 02:52 | non category | Trackback | Comments(2)
Commented by ゆっぷ at 2010-10-27 10:38 x
FU~
すごく良い!!
行ければ行きたかったけれど、
私が行ってもこんな風にブログには書けないです。
きっと、ayuさんだから書けるんですね。
今日の京都はとっても寒いけれど、ほっこりした気分。
寒い日のポタージュみたいなひと時でした☆

また、遊びにきます♪
Commented by ayu_cafe at 2010-11-01 00:06
ゆっぷさん、ふ〜、よかった。。
うれしいです。
京都までスープお届けできたなんて!


おそらく、いろいろな方が、
いろいろなことを思ったのでは、と思います。
思ったり、書いたり、
時に共感していただいたりも、
これもその時のそのタイミングだけの
ライブ、だなあ、と思います。

こうやってお話できてよかったです。