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奄美。田中一村。閻魔大王への手土産。

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千葉美へ雨の中、田中一村展を見に行った。
山梨の叔母も、クルマで山梨から見にいっていた。

ポストカードは、ほぼ完売で、
図録は、後日郵送、と言われた。


あの、奄美の絵が林立した最後の展示室。


思い出すだけで鳥肌がたつ。



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最後の展示室に、たまたま、絵と、わたしだけになった時があって、

異様なものに包まれている感じがした。






題材、も、もちろん異質だが、

わたしがなにより感じたのは、

つきぬけた構図の素晴らしさと
繊細さとダイナミズム。


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構図が優れていれば、つまり、
グッズ映えする。

(広告も、キーアイコンは、小さなツールにしてみて
はじめて威力がわかる。)

逆に言うと、グッズ映えするものは、
構図が優れている。


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巨大なポスターを買ってもって帰った。

巨大すぎて電車で持って帰るのに難儀した。


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こんな凄い、絵、持って帰るのに難儀するくらいで
ちょうどいい。

この絵、『不喰芋と蘇鉄(クワズイモとソテツ)』は、

島の聖地といわれる、風葬の場所である、洞窟で描いた。



中央画壇には、ついに受け入れられず、無名のまま、
奄美に惹かれ、すみつき、果敢にスケッチを重ね、
もう、中央画壇への執着を終わりにして、
自分のための自分の絵を
追求して追求して追求して追求して追求して追求して、

ついにこの絵を描いた。


画面に円を描くように咲く不喰芋の花は、
いちどにこのようには咲かない。
季節のうつりかわりの観察によって
生命のはじまりからおわりまでが描かれている。

左下と右横の蘇鉄が女性だとすると、
不喰芋は、男性か。とても官能的。

そして、画面中央奥には、

奄美で、立神と呼ばれる神聖な岩が見える。


奄美の信仰では、理想郷ネリヤカナヤから、
やってくる神様が、この岩に手をついて、
島にのぼってくるとされている。


神を中心とした生命のダイナミズム。
気持ちが動揺してやまない生々しい宗教画。


この絵を、誰にも知られず、誰にも評価されず、
田中一村は描ききった。



かれは、ひとことこう言っている。


「この絵は、百万円出されても売ることはできません。

この絵は、閻魔大王への手土産なのです。」







そこが、地獄だろうが天国だろうが、
これが、おれだ、おれは、これをやった、
というのものを、携えた彼は、どこも、誰も、怖くなかっただろう。


煮るでも、焼くでもしてくれよ、
おれは、これをやりとげたから、充分だぜ。


そういって、「手土産」をかかげて、
彼は、地獄の閻魔大王に笑いかけただろう。





絵を見ていると、彼のつぶやきが聞こえる。


「きみは、そういうこれがおれだ、という「手土産」をもっているか。
作品でも、仕事でも、平穏な家族との日常でもいいと思うが。

あまりにも、あやうく、いつ終わるかわからないその生命を

燃やしているか。

おれは、やったぜ。見ただろ、やりきったぜ。

評価なんかされなかったけどな。

おれのシマからきみの健闘を祈るよ。」
by ayu_cafe | 2011-10-17 22:58 | 奄美 | Trackback | Comments(4)
Commented by ikko at 2011-10-18 20:04 x
お久しぶり。
あ、いいなあ。
田中一村は個人所有が多くて、
まとめて見られる機会はなかなか少ないと聞いてます。
千葉で見られるの!?と血糖値があがりましたが、
残念。。。2010年かあ。
でも ayuさんのお陰で久しぶりにみることができました。
ありがと。
いいよね、綺麗で、怖い。
Commented by ゆに at 2011-10-20 22:09 x
あ、奄美だ。と反応してしまいました。名前だけしか知らないけれど、田中一村さんの絵、すごく惹かれました。奄美は私の半分の血のルーツなので、行きたいところです。
Commented by ayu_cafe at 2011-10-25 09:18
ikkoさん、きれいなものは、
こわい。
きれいで、こわいものに、会えるって、
生きてる醍醐味のひとつだね。
先週、田中一村美術館で
大量にきれいで、こわい絵を
見てきたよ。
Commented by ayu_cafe at 2011-10-25 09:30
ゆにさん
わ、奄美、ルーツなんですね。
一村さんの家には、
ガジュマルが影をつくり、
バナナの樹が妖艶な
花を咲かせてました。