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これで、いいわけがない。

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金曜日の会に来てくれた退職した女の子は、
会社をやめたその当時、結婚していて、
一児の母で、外国から仕入れた子供服を
ネットで販売する事業をはじめた。

その後のことを聞いたら、
自分で営業して、
ホームページをつくる仕事もしたり、
デザインの仕事もしたり。

二人目のお子さんができたときも、
ホームページの仕事を請け負っていたので、
その納品日前に、急いで産んで、急いで退院してきて
仕上げた、って言ってた。


もともと礼儀ただしくて、
仁義をきれて、体育会系で、
考え方の構築ができて、
ざっくりした見え方も、
インパクトのあるデザインで
はやいスピードで仕上げていた。



この子が、会に来たことで、
空気が明らかに締まった。
逆に、いまのぬるさを実感した。


*******************


昨日、その子の元部下だった女の子(お面の子)と
メールで話してたら、同じようなことを感じて、
落ち込んで帰った、って言ってた。


*******************



随分前、はじめて、大きな仕事の立ち上げの
メインのコピーライターになった。

クライアントの決済者の中に、
以前から知っていた方がいて、
現場を大事にしてくれて、筋の通った方だったので、
この方をがっかりさせないようなものを
絶対につくろうとおもって、
そうノートに書いて、覚悟を決めた。


その商品は、価格が700万円を越えるものだった。
既存のつくりかたにまったく納得いってなかった。
カタログのビジュアルページにお決まりのように、
カッコつけたキャッチコピーがつつつ、と入っているなんて
カッコ悪いなあ、と思っていた。

もっと外国のものみたいに、ビジュアルページは
ビジュアルだけで、説明ページは、きれいな文字組で
ビッシッと、みたいなものをつくりたかった。

見ただけで、直感的に、喉元になにかが鬼気とせまるものを。
キャッチコピーを読ませる分、訴求のスピードが
遅れると思った。


クライアントは、ビジュアルの必然性を求めた。
どうしてこの絵で、この絵ではなにをいいたいのか。
各ページごとに、しっかりとメッセージを訴えるように。

当然だと思った。
でも、それまでの作り方は違った。
かっこ良くて、美しいビジュアル、強いビジュアル
という観点でつくられていた。
時代の変わり目で、クライアントは、感覚的なものより、
もっとロジカルなものづくりをもとめた。

わたしは、各ページごとにメッセージをすることも
ビジュアルだけでできると思った。


でも、会社の会議では、コピーを入れた方が
メッセージがわかる、という意見が多かった。


*******************


その頃は、今の社長が、いちから会議に参加していて、
クリエイティブディレクターとして絶対だった。
文句をいうひとはまずいなかった。
どなるし、厳しいし、勘はするどいし、せっかちだし、
よく、同僚と3手先を読まないとまたどなられるよ、
なんて言い合ってた。


カタログのビジュアルページにすべてコピーを入れる、
ということに社長も賛成だった。
わたしは、社内の会議で猛烈に反対した。
だってアルマーニの広告にちくいちキャッチコピーが
ついてますか、その何倍も高い商品じゃないですか、
説得は他のページでびっしりしてるし、とかなんとか。。


すると社長は珍しく困って、
そこにいるチームのメンバー4、5人に
ひとりづつ聞き始めた。
コピーいると思う?いらないと思う?
多数決。。。

そのときのチームは、ほとんどがわたしより
年上のベテランの方ばかりだった。
わたしには、その仕事でキャリアも評価も得ている
年上のコピーライターが監修役としてついていただいていた。

全員がコピーはいる、と答えた。
最後のひとりが、「コピーはいるとおもいますね。。」
と言い終わる前に、わたしは、社長の目を見て、
「いや、いらない、と思います」と強く言った。

こころの中では、
「ビジュアルで説明しきれない、ってことは
ビジュアルに意志と魂が入ってないからだろ、
死ぬ気で絵をつくってないからだろ、
なんで絵の足りない部分を言葉が補足しなきゃ
ならないんだ、言葉は刃物なのに。」
なんて思ってた。

(きゃーっ、ごめんなさーい。
なにしろ若かったもんで。。。。
ま、いまでも考え、あんまり変ってないけど。。)


*******************


結局、このとき、社長は
「わかった、相澤、コピー入りの案“も”ためしに
つくってみよう」と言ってつくることになった。
上手い言い方だなあ、と思った。
(この言い方、いま、わたしは多用してる。)


年上のコピーライターの方が、
「相澤、こんな感じかな、参考までに」
とコピーを書いてくださった。
方向性がちがう、と感じたので、
全ボツにさせていただいた。
やるならやるで、参考にしたい海外の会社の
コピーのフレージングがあったので、
それをにらみながら、30分くらいで、
全ページのコピーを書いて、デザイナーさんにわたした。


デザイナーさんは、きれいな平体で、
射抜くように配置してくれた。

後で、クライアントさんに、
今回コピーいいんだよね、って言われた。


*******************


いまだに、わたしは、コピーがないほうがいいと
思ってる。でもたぶん、肝心なのは、
ものづくりに、こだわった、ということかもしれない。


*******************


その次に、大きな仕事の立ち上げをする時、
社長がまず、ブレストをしようと言った。
ブレストという甘えた雰囲気が嫌いだったので、
ターゲット、市場、商品特性、目的をまとめ、
あくまで試論ですが、と表現のきっかけとなる
ボディーコピーを書いて資料と一緒に出した。

その時点で、その商品が置かれる店舗は、
お客さんのふりをして、18店舗くらい
まわっていた。

誰がなにを言ってきても確実につぶす、
と思って会議に参加した。

(きゃーっ、ほんとにごめんなさーい、
とにかく若くて。。)


でも、相手の案をつぶす、って相手への
最大の敬意だと思うんですけどね。。
案が死ぬか生きるかのときに、
相手を尊重したり、かわいそうとか思うのは、
本気でやってない証拠かも。。。



*******************




わたしが前にいた会社の上司は、
わたしの書くものに、徹底的に、ロジカルな赤字を入れた。
これは、こう誤解される。こことここのつなぎが変。
ここは、もっと考えられる。。
できたら家にfaxして、といってその上司が帰ったことがあった。
明け方の5時頃原稿が完成して、上司の家にfaxしたら、
5分後に赤字が入ってfaxが返信されてきた。

わたしは、この上司の赤字入りの原稿を
ほとんどすべてファイルして、今働いている
机の引き出しに入れてある。

いまだに、文章を推敲する時、
あの上司のOKでるかな、と思う。




*******************



いま、いろいろなことが変った。
広告が表現の精度をもとめなくなりはじめた。
クライアントさんの窓口となる広報のひとも、
代理店の担当の方も「プロ」の方が減った。
(過度に表現の詳細に対してプロである
必要がなくなってきた。)
昔は、おれは、アートディレクター以下の人間とは
話さないよ、なんていう怖い担当の方がいた。。

なにをどうやってどこを訴求すればいいですかね、
ってところからはなしがはじまることが多いし、
社内チェックを段階的に受けていく中で
主観的なチェックで方向が二転三転することもある。


わたしは、というと、かけもちの仕事が増えた。
会社自体も仕事の単価が下がっているので、
かけもって量をこなさないとかせげなくなっている。
無謀な急ぎの仕事もたくさんある。

求道的に、デザインやコピーをつめている時間もないし、
また、それも求められなくなってきている傾向もある。

簡単にクライアントさんのOKが出てしまったり。。


*******************


クライアントさんのOKは、ゴールだが、
ゴールではない。

クライアントさんの担当さんは、
一年で異動されるときがある。
でもつくったものは、
つくり手の一生の作品になってしまう。



*******************



この流れの中で精神力と体力を維持するのも結構きつい。
つねにすべての仕事において、
ひりひりやっているともたなくなる。

なんとか方向性を見出して、着地させて、
各方面の意見を吸収して、
ミスのないよう短時間でしあげるだけで、
いっぱいいっぱいなことも正直多い。
それをたとえば、6つ同時進行させるのは、
なかなかハード。。。




*******************



でも、こんな仕事の仕方で、
こんなものづくりで、
いいわけがない、とずっと思ってる。


私生活においても。
祖母の施設について、
介護環境、行政についても、
母の脚についても、
妻の健康についても、
わたしの健康についても、

いいわけがない、とずっと思ってる。




でもそれに鈍感になってしまいがちな自分もいる。


年下の同僚から上がってくる
企画書もレイアウトもびっくりするほど、
詰めが甘い。

わたしは、ならべく赤を入れるけど、
根本の必死さの欠如を強く感じる。

これについてどう赤を入れればいいんだろう、
と思う。
ほんとは笑ってる時間なんてない。
ほんとに楽しいってことは、
笑うひまもないときのことなのに。

でも、時間もない。求められてるものも微妙。
疲れてる、かけもっている。。


この詰めの甘いレイアウトは、
わたしの現状の鏡なんだろうなと思う。


ただ、これで、いいわけがない、とずっと思ってる。
















(ほんとに長く力の入りすぎた文章、
お読みいただいてすみません。。)
# by ayu_cafe | 2009-10-27 07:38 | 仕事もしてます | Trackback | Comments(6)

『共感という絆で結ばれている無数にいる見知らぬ人たちのために、人は存在する。』

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先日、訪問させていただいたあるチョーク工場のお話を申し上げます。創業者である社長は、昭和34年の秋に、近所の養護学校の先生から頼まれて2人の卒業生を仮採用しました。毎日昼食のベルが鳴っても仕事をやめない2人に、女性工員たちは「彼女たちは私たちの娘みたいなもの。私たちが面倒見るから就職させてやってください」と懇願したそうです。そして、次の年も、また次の年も、養護学校からの採用が続きました。ある年、とある会でお寺のご住職が、その社長の隣に座られました。社長はご住職に質問しました。「文字も数も読めない子供たちです。施設にいた方がきっと幸せなのに、なぜ満員電車に揺られながら毎日遅れもせずに来て一生懸命働くのでしょう?」 ご住職はこうおっしゃったそうです。「物やお金があれば幸せだと思いますか?」続いて「人間の究極の幸せは4つです。愛されること、褒められること、役に立つこと、必要とされること。働くことによって愛以外の3つの幸せが得られるのです」

「その愛も一生懸命働くことによって得られるものだと思う」、これは社長の実体験を踏まえた感想です。このチョーク工場は、従業員のうち7割が「障害」という試練を与えられた、言わば「チャレンジド」の方々によって構成されていますが、粉の飛びにくい、いわゆるダストレスチョークでは、全国的に有名なリーディングカンパニーになっているそうです。障害を持った方たちも、あるいは高齢者も、難病の患者さんも、人間は、人に評価され、感謝され、必要とされてこそ幸せを感じるということを、この逸話は物語っているのではないでしょうか。私が尊敬するアインシュタイン博士も、次のように述べています。「人は他人のために存在する。何よりもまず、その人の笑顔や喜びがそのまま自分の幸せである人たちのために。そして、共感という絆で結ばれている無数にいる見知らぬ人たちのために」



本日のわたしの国の首相所信表明演説より。
# by ayu_cafe | 2009-10-26 23:32 | 一生勉強。 | Trackback | Comments(6)

「はい、プレゼント。」+

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金曜日、足がけ3年くらい続いた
KDDIさんのAUの「U.」という冊子のお仕事が
終わったので、チームで
打ち上げ(追悼/さよなら)パーティをしてきました。
(ハロウィンパーティもかねて。。)

キャットストリートをちょっと入った
ガレット屋さんで。。
(最後にあんなことになるとは。。)



(ちなみに↑この写真、携帯でとったんですが、
フォークのカーブに、そえられた指の感じが
ロウソクのあかりでとてもきれいで、わりと好きです。
ま、なにかの偶然でしょう。。にゃはは。。)





ガレット屋さんはこんな外観です。

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チームのスタッフが、選んでくれました。

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内装はこんな感じ。

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スタート時にめちゃめちゃ活躍してもらって、
その後退職したメンバーも特別に来てもらって
万全のメンバーでスタート。
(このメンバーでは去年クリスマス会もやったんですけど、
その時は忙しくてこれないメンバーもいたので、
今回は全員来れてほんとによかった。。)







ガレットは、何種類も出てきて、
おいしくて、そうとうお腹いっぱいになりました。

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コースの最後に、うちのスタッフがケーキを
追加オーダーしてくれてました。
なんとうちのスタッフのデザイン。きゃー。






どーん。
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「U.」の名前があしらわれています。
店員さんに、どなたかのお誕生日ですか、
と聞かれたので、
いえ、「U.」の追悼でして。。
と返答。。

それにしてもよくできてます。
さすが、デザイン会社。。






この「U.」という冊子では、相当やりたい放題
させていただきました。

仕事の内容はこちらにも書いています。


こんなお仕事はなかなかないでしょう。。
なかなかないので、楽しかったし
大変でした☆


というわけで、わたくし、
クリエイティブ☆ディレクターとして、
断固として、果敢に提案。


ハロウィンだし、今回もプレゼント交換を!


前回のクリスマス会のときも
プレゼント交換してたんです。
そのときの模様は、こちら




広告やものづくりって、ようはプレゼントなんですよね、
たぶん、すべての仕事は、プレゼントなんです。
ゆえに、プレゼント交換は大事です☆




くじをひいて、順番に交換していきます。
誰のが誰にあたるかはわかりません。。

では、さっそくご紹介。






動物クラフトカレンダー
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(もらったひと、これほしかった、と。。)






ポップアップアルファベット絵本
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(デザイン性、ものすごく高し。。)






江ノ島の龍のお守り
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(このひとのプレゼントは、お守りが多い。。)






かわいい紅茶セット
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(使ってしまうのがもったいない。。)






旅してきたばかりの屋久島のレアな地酒
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(飲みごたえるあるプレゼント。。
もってかえってくるのも、もってくるのも
大変だったのでは。。)






きれいなハロウィンのブーケ
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(意外な繊細さがぐっときます。。)






書いて消せるボード。
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(書いて消せます。。)







これがすごいんですけど、
コピーライターのスタッフが自分で写真とって、
デザインして、完全データ入稿して、
出力センターで製本までしてもらってる冊子。
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冊子「U.」の歴代の表紙が入っていたり。。

ラフ案の段階で終了してしまったため、
日の目をみなかった案が
入稿されていたり↓
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こ、これは、一部だけの印刷だし、相当高くついたのでは。。
でも、大人気でした。

そう、そのひとだけができて、その相手だけとのなにか
っていいですよね。。(予算度外視だが。。)







それから、新婚のスタッフと
お子さんが生まれたひとがいたので、
プラスアルファで、ささやかなプレゼント。
会社近くのOrne de Feuillesにて入魂のayuチョイス。




新婚さんには、味のある木のフォーク。
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ベイビーのお祝いには、ドイツのアンティーク。
首がゆれる目がこわいオットセイ。。
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ちなみにわたしのプレゼントは、
おこがましくも、
『よくばりねことしょうじきねずみ』のぬいぐるみと
おはなしをセットで。。入魂の包装で。。
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(ま、世界にひとつだけってことで。。)







わたしがもらったのは、
L'OCCITANEのハンドクリームとハロウィンのチョコと
直筆のお手紙。
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(直筆のお手紙の内容には、
みんな悲鳴をあげてました。。笑)








さ、ここから変なことになってきます。。









わたしたちは、U.のある号で、イラストをメインにした
こんな号を作りました。
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この表紙の女の子は、わけのわからないモデルより、
いっそ、これをデザインしてるデザイナーの子でいいじゃん、
ってことになり、ほんとにそのまま完成してしまいました。
(つくりての顔が見える。。)


で、これが完成したとき、わたし、
責任あるクリエイティブ☆ディレクターとして提案しました。

「これ、お面にして、みんなでつけて
写真とろうよ!○○さん(絵の子)だけ
お面つけないで。。」




で、今回サプライズで、スタッフがほんとうに
お面をつくってくれました。









どーん。
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で、みんなでつけてみました。。








どかーん。
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お店のひともびっくり。。。
学祭の打ち上げか。。。

向かって左から3番目がわたしです。
(↑どうでもいい)









本人にもつけさせました。

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ワインを片手に。。。











オブジェとして、とらえてみました。。

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*帰り途中の写真を入手したので追加*

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バカどもめ(笑)

っていうかこういうキャンペーンやったら、
もうすこし利用促進されたのでは。。
(なわけないか。。)









ほんとにすいません。。





このスタッフたちは、
おもしろい案だしだけでなく、
細かい作業や時間のない作業、
つくるルールや方向が見えない中での作業、
を、うんとたくさんやってこの冊子を
つくってきました。

クライアントさんも最後にわざわざ時間を
つくって、お礼を言ってくださいました。






最後に、わたしがもらったプレゼントの
手紙を全文掲載しちゃいます。

これを書いた女の子は、
誰に渡るかわからないプレゼントで、
こんな悲鳴をあげそうな内容のことを
書いています。

それは、誰にわたっても伝わる
内容だからだと思います。
半分冗談で半分本気なのではと
思います。

この手紙は全員に渡ればよかった。





『あなたのことをずっと見てました。
夜遅くまでがんばっているとこ。
忙しくても、ちゃんと丁寧に仕事するとこ。
会議中の熱心な話しぶり。
ふとしたときに見せる笑顔。
パソコンに向かっているときの凛々しい横顔。
いつもまぶしかった。
思わず惚れてしまいそうだった。
そう、あなたの仕事ぶりが好きってことは
あなたのことが好きってことなのかも
しれない。(キャー!)
これからも、ずっとあなたのことを見ています。
できればこの手紙は、会社の引き出しに入れて、
たまに見返してくれたらうれしいな。
いつもあなたを応援してるってこと、忘れないで。』




(笑)うちのチーム、わりといいチームでしょ?




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# by ayu_cafe | 2009-10-26 04:37 | 仕事もしてます | Trackback | Comments(6)

フェンダーツインリバーブの真空管がほこりを焦がす匂い。

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仕事が終わったあと、明治通の信号を渡っているとき、
「相澤君」と声をかけられた。

「君」って久しぶりな呼ばれ方にどきっとしつつ振り返ると、
リードギター君だった。


近くではたらいていることは知ってたけど。
その場で名刺交換などして、メールちょうだいよ、ご飯行こ、
とか、次長か、すごいねー、ま、小さな会社だからね、
なんてことをちょっと話して別れた。



*********************



数日後、ランチして、いろいろはなした。
さすが、めちゃはなしがはやい。
ガエル・ガルシア・ベルナル、いいよね、
天国の口、終わりの楽園、見た?
見た見た、すごい好き。
最後、ザッパの曲かかるじゃん、いいよね。
ストーンズの映画、すごいよかったよ、
サントラは買ったけど、まだ観てないんだよね。。
とかとか。。



*********************



彼とバンドをやってたのは、もう10年以上前。
その頃は、音楽のことしか考えてなかった。
旅行も、写真も、ましてや広告なんて、
まったく興味がなかった。
どっぷりと音楽を聞いて、毎週2回練習スタジオに入って、
月に1回から2回都内のライブハウスに出てた。
音楽以外の仕事をするなんておもいもしなかった。
(ま、ちなみに、ぜんぜんたいしたことないんです。。)



出てたライブハウスは、
新宿JAM、
代々木チョコレートシティ、
下北沢屋根裏、
吉祥寺曼荼羅、
西荻ワッツ。。とかとか


編成はわたしがVoとG
あと、リードギター君とドラム野郎とベース君。

しばらくして、女の子とわたしがVoで
わたしがG、あとパーカッション君っていう
編成で、渋谷のtake off 7ってところに
しばらく出させてもらってた。



*********************



ずっとわたしが曲や詩やリフをバンドにもっていって
オリジナルの曲をやってた。

練習ではカバーもやった。
リトルフィートのデキシーチキンの一曲目とか、
ミーターズとかのカバーとかもやってみてたけど、
今、思うと、セカンドラインファンクに手を出すなんて、
めちゃめちゃ無謀だ。。。


バンドでやりたかった音は、ファンクっぽいリズムよりのロックに、
セブンスコード(デミニッシュ?)って言うコードを使って、
ひろがりのある風景が見えてくるようなものがつくりたかった。

これは、おもにリズムの好きな曲だけど、
Curtis Mayfield の「Freddies Dead」とか、
Rolling Stonesの「Fingerprint File」とか、
Donny Hathaway の「The Ghetto」とか。。
Street Slidersの「Back to Back」って曲には凄く憧れた。
あとポールウエラーのソロの一作目、
イアンデューリー、スライストーン、スティービーワンダー。。

16ビートのモロファンクじゃなくて、
8ビートなのに、重く跳ねる感じ。。



*********************



何千、何万と曲を聴いていくうちに、
だんだん自分はこれが好きなんだな、というのが、わかってきた。

わたしの場合は、
カーティスメイフィールドと
ダイナソーJrと
ブライアンウイルソンだった。
(↑めちゃくちゃ☆)


あとセブンスとファンクってことでいうと、
ブラジルのジョルジュベンや、MPBの音を
聞いたときは、まさに自分の大陸をみつけたような
気分になった。

3人編成のときは、トニーニョオルタや
エリスレジーナみたいなおおらかな
音楽をつくりたかった。


とにかくなにか風景を見たかったし、
見せたかった。


*********************



バンドの練習では、最初の一時間くらい、ずっとジャムってた。

これが、もうたのしくてたのしくて。
ジャムというとギターソロ、かわりばんこ、
みたいなバンドもあるけど、
わたしたちは、ワンコードないし、ツーコードのみで
ひたすら、リズムと間を構築しようとしていた。


思い浮かんだギターリフではじめて、
そこにドラムとベースがあるリズムをつくってくれる。

バンドの真ん中に生きたリズムが生まれて、あとは、
みんなで、その生きたリズム(グルーブ)に対して、
リフやフレーズやハイハットのタイミングとかを
抜いたり、つっこんだりする。

誰かがなにかをすると、それに反応して
誰かがなにかをする、それがまた影響して。。
って感じで、いつのまにかおもいもよらない、
有機的なグルーブができる。
ふわっとからだが浮かんだような、
なんともいえない気持ちのいい感じになる。


気持ちのいい間とリフが、ここかな、と言う感じで
固定されると、あとは、それをくりかえしてるだけで
気持ちがいいし、どんどんどこかへ、
のぼっていくような気分になる。
(ま、うまくいった場合)

たぶんその間、バンド4人で、ものすごい生理的な情報の
交感をしている。

スタジオのあの匂いの中で。



椎名林檎さんが「丸の内サディスティック」という曲で
“マーシャルの匂いでとんじゃって大変さ”
って歌ってるけど、このフレーズ、
すごくよくわかる。

わたしの場合は、マーシャルではなく、
フェンダーのツインリバーブってアンプを
使っていたけど、このアンプのうらに真空管が
むき出しでついていて、スイッチをいれると熱くなる。

で、真空管にすこしつもったほこりが焦げる。
このかすかな焦げる匂いの中で、
4人で黙々とグルーブをつくる。




練習を終えて、飲みにいったりすると、
ぜんぜんはなしなんてはずまない。
むしろなんだか照れくさい。
もうたくさん「話した」から。。
明るいところが苦手な恋人みたいっていうか。。
うまくいってるときの関係性って
話す必要がない。



*********************



実はこれ、いまやってる広告つくることとすごく似ている。

デザインの余白、書体の選び方から、思想、ねらいどころ、
フレーズ、その辺がものすごい近さで共有できるひととやるとき、
バンドでジャムってるみたいな感じがする。

あ、そうデザインするなら、こんなコピーどう?とか。。
こんなのどう?ここの余白いいね。とか。


で、やっぱり飲み会ではなしがはずまない。
むしろてれくさい。
っていうか、もう仕事をするだけで、
デザインをつくっただけで、
その時点で「話し終えてる」。


そういう無言の「会話」は、
遊んだり、飲んだり、まったりしたり、するより
なにより蜜のように楽しい。
(あくまでもうまくいく場合。。)



これが合わないと、延々と話し合いになってしまうことがある。
文字を105%拡大するかどうかで、
延々とはなすときがある。


こういう組み合わせはなかなか大変。



でも、うまく行くチームの交感のスピードはすごい。
素晴らしいスピードの波に上手に乗れてるような気分。




でも、時期がすぎるとその合う感じが失われてしまう
こともしばしば。ほんと生もの。

ものを一緒につくるのは、生理感覚の交感だから
うまくいくときは最高で、
うまくいかないときは最悪なことになる。
まあ、恋愛みたいに。。



*********************



バンドが続かないのもよくわかるし、
バンドを止めたり、辞めたひとの複雑な心象も
なんとなくわかる。

わたしは、最後の最後にバンドを止めて、
週二回の練習とライブの予定が白紙になったとき、
正直なことを言うと、すごくほっとした。。



*********************



会社のいいところは、解散しなくてもいいところかな。。
組織や仕事によってホールドされてる。
これがないと、個人同士のつながりだけ。
それだけで、感性全開のすりあわせを
毎回、一年中、やるのって大変だ。。



*********************



ま、でも、いまだにプリンターから、
あたらしいデザインが出てくるときは、
バンドでどこかにのぼってるときみたいに
ドキドキする。

あの、ツインリバーブがほこりを焦がす匂いがしてくる。


やってることは、根本的には、たぶん同じ。

誰かとなにか、みたこともない風景を
世界に内緒で生み出して、
波のようなものにグイッと連れていかれたい。

わたしは、そういうことをずっと
求めているのかもしれない。



*********************



ちなみに。。。。
少しまえ、クライアント様と
おつきあいカラオケをやっていた。

クライアント様の偉い女性の方が面白くて、
歌がへただったり、自分の好みに合わないと
イントロで勝手に消したり、
ただ歌がうまくても、音があってるだけじゃん、
って言ったり。。(音楽業界にもすこしいたみたい。。)

面白いなーと思っていたら、
夜中の3時くらいにベロベロに酔ったその
女性の方が、わたしが歌い終わったとき、
「相澤さんの歌って風景が見えんのよ」
って言ってくれてどきっとした。


企画書をつくっていても、
デザインをつめていても、
歌をうたっていても、
おはなしを書いていても、
なにか風景が見えるといいな、
と思ってやっている。


やろうとしてることは、
やりたいことは、
結局、昔から変わらない。
なにをやっていたとしても。。












(長い文、最後までお読みいただきありがとうございました。)
# by ayu_cafe | 2009-10-23 06:43 | 仕事もしてます | Trackback | Comments(10)

音楽とダンスというサプライズ。




大音量で。






テリーギリアムのフィッシャーキングが元ネタかな。
ダンスが終わった瞬間に、
知らんふりして、別々の方向に歩き去る
ところが好き。
そこも、フィッシャーキングと同じだけど。。



イギリスの携帯電話会社のCM。
ひとは、驚いたとき、携帯をどう使うか、を
マルチアングルでドキュメント。





やっぱり音楽とダンスって素晴らしい。
日常の中にあればあるほど。


音楽とダンスそのものが、
そもそもサプライズなのかもしれない。
# by ayu_cafe | 2009-10-22 09:34 | ayutube | Trackback | Comments(8)

ねこ日和。

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ねこと、ひと。
両者、無心。。
# by ayu_cafe | 2009-10-21 07:48 | ayuCafe ねこ Bar | Trackback | Comments(0)

ざくろ育ち。

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山梨の家のざくろ。
叔母が、ざくろ、描こうと思ってね、
って言ってた。


ちいさいころ、たべてた。
ぼとんとおちたやつをひろって。。

たねが大きくてあまり食べるところがないんだけど。


でも、からだに育った庭のざくろが
いくばくか、しみこんでいると思うと、ほっとする。

いくらいろいろなものが変ってしまっても。

あの時のざくろが、かだらに深く静かに、
しみこみ続けている。



海辺の庭にも、育った庭のざくろや、くるみの樹を
植えたいなと思った。
# by ayu_cafe | 2009-10-21 07:42 | 花と樹と庭のこと | Trackback | Comments(0)

IKEA、組み立て中。(IKEAに学ぶ)

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寝室にて、IKEA組み立て中。

まだまだ途中。。


それにしても、ものがない、というのは、
なんと美しいことか。。。


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IKEAのシステムは、ものすごく勉強になる。

あの巨大な(明るい)倉庫のようなところから
自分で運んでくるシステム。

デザイナーが生産、梱包、運搬、の行程を
考えてするデザイン。

そうして実現した衝撃のフラットパック。
梱包形態が、すでに、美しい。
これぜったいそう指示出してる。


優れたものづくりって絶対に行程が美しいはず。




そして、衝撃の組み立て解説書。
文字がいっさいなくイラストのみ。


これは、広告づくりの、
日本のサービスというものへの、
参考になる。


IKEAのシステムは、値段をさげるために、
ユーザーに対して、親切すぎない。


わたしたちは、大量買いしたので、
(巨大なカートひとつ、
巨大なキャリアふたつに、山盛り)
レジまでの、搬送受付までの、移動も、
汗だくになったし、組み立てもなかなかおわらない。

説明書も推理する部分もなくはない。

でも、使ってない筋肉を使っているみたいで、
なんだがちょっと気持ちがいい。
なによりそれで低コストが実現されてるんだし。。



日頃仕事でつくているカタログみたいなものは、
とにかく、クレームを避ける。
細かく注記をうつ。「注記で逃げる」

わかりやすいことは大事だけど、
説明しすぎて、パッと見、読むのがもうめんどくさく
感じることもしばしば。。

家電の説明書とかも。。。


これは、お国柄の体質なんだろうか。。
改められることなんだろうか。。

とにかくユーザーの、自己責任、自立判断能力、
自己創造力というものを軽視している
気がしてしかたない。


不親切では、いけないけど、
親切すぎるというのは、親切ではないかも。。


ユーザーも、甘えてしまっていて、
なにもかもを望み、なにもかもを
相手のせいにしているようなが気がしないでもない。



日本では、踏切の前でクルマは、必ず一時停止する。
フランスのドライブガイドには、日本人向けに、
電車があきらかに来てもいないときに、
不必要に停まったら、後続車に対してかえってあぶない、
みたいなことが書いてある。

つまり、自己判断か、法律ありきか、の違い。


日本の繊細で丁寧なサービスは、すばらしいと思う。
なにもかも、ユーザーよろしく、ではよくないけど、
わかりづらいから、不親切だから、といって、
結果的にコストが高くついたり、ごちゃごちゃな見栄えになったり、
表現が没個性なものになってしまっては。。。

どこかいいバランスポイントが見つかればいいんだけど。。



そんなことを考えながら、IKEAの解説書を見て、
組み立てしていた。。
知らない間に筋肉が負荷に慣れるように、
このIKEAのシステムにも、慣れていくと思う。




たぶん、なれていない「筋肉」って
まだまだたくさんあるし、
ちょっとくらいのつらい、と思うことは、
慣れていないだけなのかもしれない。










ともあれ、ものがない、って美しい。。


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# by ayu_cafe | 2009-10-21 07:27 | 一生勉強。 | Trackback | Comments(4)

どこか遠い場所で、食事をはじめる2 *プライアーノ,アマルフィ海岸,イタリア*

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しょうがない。。
がんばるか、今日も。。







***********************


プライアーノは、ポジターノと
アマルフィとの間にある。

朝は、明けてくるポジターノの街と海を見ながら
食事をする。

アマルフィは、一帯の海岸線が、
世界遺産になっている。

このみずみずしいモッツァレラも
世界遺産にするべきかも。。

カプリから、ソレントに船で渡り、
アマルフィ海岸のワインディングをバスにのっている間、
ずっとビデオをまわして海岸を撮っていた。

モッツァレラを食べ終えたら、ナポリに向かう。
# by ayu_cafe | 2009-10-20 06:17 | どこか遠い場所で... | Trackback | Comments(4)

美術館。

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ルーシー・リーの陶器には価格がついている。

セザンヌの絵にも。
ファンゴッホの絵にも、

イサムノグチの彫刻にも。

カルティエブレッソンの写真にも。
リサ・ラーソンの陶器にも。

長谷川等伯の絵にも。
宮沢賢治の物語にも。
コルビジェのデザインにも。


ならば、この朝の透き通る光は、
いったい、いくらくらいの価値があるんだろう。

雨をやりすごし、つめたい夜にねむり、
朝の斜光に目覚める豊かな花と葉の造形は、
この自然の手作りの作品は、
どのくらいの価値があるんだろう。


この光と色彩と造形が、美術館に展示されているものに、
おとっているとはとても思えない。


優れた造形の陶器も、
わたしの手元にあって、
わたしの足もとにある朝の斜光と花と緑も、
現世と言う美術館の中のひとつの作品かもしれない。
# by ayu_cafe | 2009-10-18 07:50 | 花と樹と庭のこと | Trackback | Comments(0)

ロウソクの灯りで葡萄をむく。

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妻と一緒に買ってきたロウソク入れにロウソクを灯し、
その灯りで、かいじ、というぶどうをむいて食べた。


かいじは、むきづらいので、丁寧にむかなければならず、
だから、ゆっくり時間をかけて食べれる。
ちょっと休んだり、甘みをたしかめたりしながら。




ちいさいころから、ずっとぜんそくだった。
いまはほとんどひどくならないけど。


小さい頃、夜中眠れず、
息をするのが毎回つらくてしかたなかった。

発作のとき、息は、吸うより、吐く方が楽だったので、
よく、今、吐いたから、次は吸う方か、やだな、
なんて思ってた。

ずっと小さく点いてる部屋の室内灯の
暗いオレンジ色がとても嫌だった。


なんでおればっかり、なんて思ったかな、
たぶん、あんまり思わなかった。

それどころじゃなかった。
次の息をなんとか吸わなければいけないので☆



今思うと、育ててもらった祖父母にも、両親にも、
こんな子供で、とても迷惑や面倒をかけて
申し訳なく思う。



高校の時ですら、学校を休みすぎて、
相澤君、辞めたのかと思ったよ、
なんてクラスの女の子に言われた。


ずっと思ってたのは、
こんな調子では、社会になんて出れないなあ、
ってことと、
ましてこんなことにつき合ってくれるひとを
見つけて、結婚するなんてできないだろうな、
ってこと。



それが、いま、妻と一緒に買ってきた
ロウソク入れにロウソクを灯し、
その灯りで、ぶどうをむいて食べている。

今年は、同時進行の大きな仕事を6本、
まかせていただいた。
(ほんとんど、優秀なスタッフの功績だけど)

岡村さんとかけがえのない絵本もつくれた。

ひとりごとのようなブログに
とてもうれしいコメントをいただいたり、
お会いしたり。。




つたない経験上、ひとつ確実に言えることは、

人生の次の一幕というのは、
まったくどうなるかわからないということ。

うかつに、絶望も楽観もできない。







ちなみに、妻は、いまでもたま〜に、
私に発作がでて、喉の音がするとき、
「あ、ぴゅーぴゅー丸がいる!(笑)」ってちゃかす。

シリアスに心配されすぎるより、
ちゃかされたりする方が、気分が楽になるなんて
知らなかった。






ロウソクの灯を眺めながら、
次の旅行は北欧もいいかなあ、なんて思ってる。
# by ayu_cafe | 2009-10-18 00:53 | かぞくのこと | Trackback | Comments(4)

『手紙が書きたくて、旅行に出たい。』

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パリの友人からいただいたカード。

バカンス先の南仏のTOULONから。
ブルターニュのQUIBERONから。
CHANTILLYから。

週末でかけられたフォンティヌブローから。

そしてパリから。





旅先からカードをいただくってことは、
わたしのアドレスももっていっていただいてる
ってことで。。。
わたしのアドレスも旅させてもらってるのか。。




友人いわく、

『旅先ポストカード…、
あて先の相手を頭に思い浮かべながらの
ポストカード選びの時間は、
私にとって、旅行の醍醐味の一つ。
手紙が書きたくて、旅行に出たい、
みたいなところもあって(笑)。


手帳の中には、常に国内用と日本用の切手を
切らさないようにしていて、
いつでも手紙を出せるようになっていないと、
これまた嫌なんです。。。』




手紙が書きたくて、旅行に出たい。



人間っていうのは、この世界っていうのは、
なんだか、とてもふくよかだなあ、と思います。

わたしも手帳に切手、入れておこ。

そしたら、いつでも、
つながりのようなものを感じられるし、
日々の時間刻みのスケジュールだけでない
世界のひろがりも感じられるはず。

手帳がすごくいいものに感じられるはず。





この友人、マガジンハウスさんのサイトで
パリレポートを書かれています。

最新のレポートは、こちら。



Nuit Blanche<白夜>という夜通しアートイベントの
レポートなんですけど、
これを読むとむこうってアートと日常がほんとに近いな、
と思います。

夜通しのアートイベントを
大きないくつかのエリアで開催して
長蛇の列ができてる。


アートって、素敵な余白だと思うんですけど、
素敵な余白に長い列ができてるのも、
これまた素敵だな、と思います。
同じ夢を見てるみたいで。
# by ayu_cafe | 2009-10-17 08:16 | 友人・同僚のこと | Trackback | Comments(4)

新シリーズ どこか遠い場所で、食事をはじめる。

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ニース発マルセイユ経由リヨン行きTGV。


SNCFニース駅1番線を発車したのが午前10時30分。
この列車で、南フランスを北上し、プロバンスへ向かう。


車内は、アメリカ人のカップルがひと組、
ハリーポッターの映画に出て来るマクゴナカル先生に似た
上品な初老の婦人が一人。
乗客はそれだけ。


アヴィニョンまでは約3時間半。しばらくは海沿いを西へ。
アンティーブからカンヌ、St.ラファエル。

時刻表と地図と時計を見比べて、
コートダジュールの海岸線のどの辺を
今、走っているのかあたりをつける。


TGVのビュッフェで買った赤ワインをあけ、
ニースの新市街で買っておいた
生ハムとチーズのバゲットとキッシュで、
ランチをはじめる。


列車は、人気のない海の間際を走しり、
湾曲する海岸線を大きく見下ろす断崖を走しる。


快適すぎてカメラのシャッターが押せない。
そんな下世話なことは、とてもできない光景と空間。

静かな車内、静かな海岸線、静かなコートダジュール。

マクゴナカル先生がきれいな姿勢で光る海を見ている。
# by ayu_cafe | 2009-10-16 05:21 | どこか遠い場所で... | Trackback | Comments(0)

子守唄返し

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子供のころのいちばん古い記憶ってたぶん
祖母に子守唄を歌ってもらってるものかもしれない。


たぶん、縁側の外に出ていた。
山梨の祖父母の家で、植物や樹がちかくにあった。
虫の音か樹々の葉がざわつく音がしていて
その中で祖母がつぶやくように歌う声が聞こえた。



*******************



金曜日、7ヶ月ほど続いた大きな仕事の
商品発表会に出席した。
これでこの仕事はおおむね終わり。

社長様のスピーチなど聞いて、終了後、
すぐに渋谷の花屋へ。

祖母の誕生日の花束をつくってもらう。
祖母はえんじが好きなので、
えんじの見事なゆりをメインにしてもらう。

祖母の90歳の誕生日プレゼントに、
この花束とルイ・アームストロングの
ミレニアムベストというCDを買った。


このCDはルイの生誕100周年の記念盤で、
在籍した各レーベルからの21曲が
デジタルリマスタリングされて入ってる。
32ページのブックレットでは
サッチモストーリーも読める。
なにより藤子不二雄A先生描き下ろしの
ジャケットが有無を言わさず素晴らしい。



翌日、花束とCDをブラックパール号につんで
山梨へ向かった。



*******************



祖父が亡くなってから、祖母は、
母や、叔父に呼ばれて、
神奈川や東京の家でのんびりしていた。
わたしが浪人生のとき、祖母が神奈川の家に
来ていたので、よく勉強の合間に、
一緒にお茶を飲んだりしていた。


小春日和の午後のあたたかい一時、
祖母と一緒にお茶を飲みながら、
ルイ・アームストロングのテープを
よくかけて聞いていた。



*******************



祖母は、ルイ・アームストロングの
「What a Wonderful World」と
「La Vi En Rose」がお気に入りで、
この2曲をよく聞いた。


祖母は感情や感情表現が豊かだったので、
しみじみと「いいわね〜」
「このひともつらいこともあったろうにね〜」
なんていって、「What a Wonderful World」を
聞いていた。


祖母は、長年の連れ合いを亡くしたばかりで、
わたしは、将来が何も見えず、
午後の日だまりはあたたく、
ルイ・アームストロングは、
まるで日差しに花がこぼれるように、
笑みがあふれる声で、
「What a Wonderful World」や「La Vi En Rose」を
くりかえし歌っていた。



*******************



土曜日、夕方、施設に祖母を訪ねた。

祖母は、今は、
こちらからの呼びかけに、まれに反応がある
というような具合。


顔色いいね〜。手もすべすべじゃな〜い。
お誕生日おめでとう〜、
ほらきれいでしょ。

って言って、
鮮やかな花束を見せてあげる。


ルイ・アームストロングをかけて、
「What a Wonderful World」や「La Vi En Rose」が
流れる中で、顔や手や足をあったかいタオルで
ふいて、さあ、夕飯。
ケーキは、お昼に叔母が食べさせたので、
夜は少なめに。


お昼、いとこの子供たちも来てくれたらしく、
「おばあちゃん、ケーキのときはすぐに口あける」
って言ってたらしい(笑)



*******************



叔母は、毎日、祖母に会いにきていて、
施設の方々は、昼夜、看てくれている。
わたしがしていることは、なんなのだろう
と思う。ただの自己満足か。。

なんにしても、それがたとえ間違っていても、
来れるとき来る。
できる範囲で、できるだけ。



*******************



春樹さんの1Q84で、
父を見舞いに来た主人公に看護士さんが
たしかこんなようなことを言う。

明るいことを聞かせてあげてくださいね。
わからなくても、鼓膜が明るく震えますから。


ルイ・アームストロングは、夜の病室でも、
日差しに花がこぼれるように、
笑みがあふれる声でうたってくれる。

祖母の鼓膜も、明るく震えているかな。



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*******************



春樹さんは、エッセイでルイのことを書いていて
そのはなしがすっごく好き。



ルイは、小さい頃、つまらないいたづらがもとで
“ホーム”に入れられた。
院内で、起床、食事、消灯の合図の
ラッパを吹いていた少年が事情があっていなくなったため、
ルイが急遽その役をまかされた。
彼は、ラッパの吹き方をおおいそぎで覚え、
見事にその代役を果たした。
でもそれだけではなかった。
人々は生活の中に不思議な変化が起きていることに
気づかないわけにはいかなかった。
ルイが毎日のラッパを吹くようになってから、
みんなはなぜかとても楽しい気持ちで目覚め、
とても安らかな気持ちで眠りにつけるように
なったのだ。
どうしてだろう?
それはルイの吹きならすラッパの音色が、
あまりにも自然で、あまりにも滑らかだったからだ。
(ポートレイト・イン・ジャズより)





上手って、才能って、こゆことかも。
どんなひとでも、
楽しい気持ちで目覚め、
安らかな気持ちで眠りにつけること。

輝く黄金色の水。
音楽の恵み。

それは、この病室にも、
祖母のもとにも、あたたくあふれていた。


まるで子守唄みたいに。
(子守唄返し☆)




What a Wonderful World

樹々は緑 バラは紅
花開く 君と僕のため
そして独り 思いにひたる この素晴らしき世界よ

青い空 白い雲
輝かしき幸福の日 暗き聖夜よ
そして独り 思いにひたる この素晴らしき世界よ

七色の虹が空に映え
行く人々の顔を照らす
友達同士は手をとりあい交わす 御機嫌よう
それは「アイ・ラブ・ユー」の代わり

赤ん坊は泣き 大きく育ち
僕も知らない多くを学ぶ
そして独り 思いにひたる なんと素晴らしき世界よ
独り 思いにひたる なんと素晴らしき世界よ







決して悪いことだけの人生ではなかったはず。
決して悪いことだけの人生ではないはず。

祖母の横で、ルイの歌を聴きながら、
いろいろなものをおおっている膜が、
明るく震えるのを感じた。

そして、まだまだ祖母に教えられ
育てられてるんだな、と思った。








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# by ayu_cafe | 2009-10-14 07:17 | かぞくのこと | Trackback | Comments(14)

『よくばりねこと しょうじきねずみ』

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IKEAで買ったこの子たちをみていたら、
おはなしを書いてみたくなりました。。



******************



『よくばりねこと しょうじきねずみ』



よくばりねこが言いました。

「おー、うまそうなねずみだ
いまそんなにおなかがへってないけど、
食べてやる!
なにしろおれはよくばりだからな!」


正直ねずみが言いました。

「ねこさん、ねこさん、食べたくなるのも
わかります。
でもね、せっかくこうして
なにかの縁で会ったのですから、
ともだちになりませんか?」


「と、ともだち?」

よくばりねこは、びっくりして
聞き返しました。


正直ねずみはせつめいしました。

「そうです、ともだちです。
しかもこころからのともだちです。

わたし、なんとなくわかるんですけど、
あなたには、こころからのともだちが
いなそうに思うんですが。。」


「こ、こころからの?」

よくばりねこは、ドキッとしました。


正直ねずみは正直に言いました。

「そうです。実はわたしにもいません。
楽しくさわいだり、いつもなかよく
いつもいっしょのなかまは、いるんですけどね。。

とおくはなれていても、げんきでやってると
おもうだけでこちらもげんきがでたり、

ほんとにしょんぼりしたとき、
なぜか、ちかくにだまっていてくれるような
気がするともだちが、わたしにもほしいんです。

秋には秋の枯れ葉のことを手紙に書いたり、
春には春のつぼみのことを手紙に書いたりできる
ともだちがね。」


よくばりねこはしつもんしました。

「でも、なんでそれがおれなんだ?」


正直ねずみは、また正直に答えました。

「わかるんです、
なんとなくあいそうだな、って。」


よくばりねこはしばらく考えました。

でも、考えているうちに
たまらなくおなかがへってきました。

「えーい、ごちゃごちゃうるさい!
おれは、うれしいときにたのしんで、
かなしいときにかなしんで、
おこりたいときにおこって、
おなかがへったときにたべるだけだ!
いまのきもちだけがだいじなんだ!」


そうさけびながら、よくばりねこは、
正直ねずみをたべてしまいました。



よくばりねこは、おなかがいっぱいになって、
ねむくなって、ねむってしまいました。


よくばりねこは、目をさました時、
なぜか、
「おれは、ほんとうにひとりぼっちなんだ」
と思いました。

よくばりねこは、切り株にすわって、
目からなみだをぽろぽろと、おとしました。



それから、よくばりねこは、
よくばらなくなりました。
ずっと切り株をテーブルにして、
だまって手紙を書いていました。

何日も。何年も。
たくさんの手紙を書きました。

秋には秋の枯れ葉のことを。
春には春のつぼみのことを。



やがて、よくばりねこは
ながいねむりにつきました。



何年かして、別の正直ねずみが、
切り株のまわりにあるたくさんの手紙をみつけました。

その正直ねずみは、だまって
切り株にすわって手紙をよみつづけました。

やがて、別のよくばりねこがやってきました。
そのよくばりねこも、だまって
ちかくの切り株にすわってその手紙をよみつづけました。


秋のこがねいろの夕日が、
切り株にすわって手紙をよむふたりを
あたたかくてらしました。

秋の枯れ葉のかさかさという音だけが、
していました。




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# by ayu_cafe | 2009-10-08 20:55 | ayuCafe 創作 Bar | Trackback | Comments(18)