感謝をこめて死を準備する。
山梨に行ってきた。
育ての親のような祖母に会うために。
画家の叔母が、母の実家にいる。
叔母は、その実家で、不定期に、料理を出すお店をやっている。
叔母も、母も、料理にはこだわる。
ふと、あらためて、叔母の食器棚や、
厨房の食器棚を見て、驚いた。
いいものがたくさんある。
見てもいい?と聞くと。
叔母は、いつもの調子で、山梨弁でこんな風に言い放つ。
「絵描きの選ぶ食器づら、好きなの持ってけ」
祖母の施設へ、お昼ご飯に合わせて、叔母と行く。
叔母は、「おかあーさん」と声をかけて、
寝ている祖母の体勢を整え、タオルやまくらを
身体の各部分にあてがう。
顔や手をふいてあげて、
マッサージをしてあげる。
わたしは、タオルをあらいにいったり、
つめがのびてないか見て、切ってあげる。
顔の産毛やなんかも切ってあげようとしたけど、
顔をよく動かすので、危なくて、うまくできない。
お昼がくるまで、叔母と体操する。
足を悪くしている叔母が、ずっとサッカーをやっている
息子から教わった、足の筋肉をつける体操。
猫背を直す体操も教えてもらい、30回を2セットづつする。
祖母の部屋の窓からは、田んぼが見えて、実をつけた柿の木が見える。
晴れた日は目の前に富士山も見える。
この前来たのは、9月だった。
9月に来る前は、だいぶ間があいた。
来よう来ようと思っても、仕事がハードで、
身もこころもくたくたになり、
なかなか、出掛けられなかった。
間があくと祖母に会うのがこわくなる。
叔母が、またぶっきらぼうに、
そうとう末期だね、なんて言うと余計に。
施設のエレベーターでのぼっていくとき、
部屋に行くのまでの廊下を歩いていくとき、こわくなる。
急にかわってしまったひとを見るのは、怖い。
徐々に変るなら、変化に気づかないけど。
この怖さは、会いに来る間隔があいた代償だな、と
ぐっと受け止める。
でも、間隔があいて、怖いときも、会ってみると
想像していたのより、ずっと血色がよくて、
肌もすべすべしていて、安心する。
たぶん、想像してしまうことがいちばん怖い。
村上春樹さんの小説で、ナイフで切られた傷について、
これは、ナイフで切られたただの傷だ。
というようなフレーズがたしか、あった。
それ以上でもそれ以下でもない、というニュアンスで。
今回は、一ヵ月ぶりくらいだったので、怖くなかった。
だけど、会ってみて、驚いた。
すごくやせている。
というより、最初、遠くから寝ているところを見て、
生きているのかわからなかった。
肌は、まだ、すべすべしていたけど、
肉がとても減ったので、それが確認しづらかった。
手をにぎると、ぎゅっとにぎりかえしてくる。
わたしが、いろいろ話しかけると、
こちらを見て、顔の表情がかわったので、
叔母が、「あれ?!わかるのかね?!」と驚く。
これは、わたしの個人的な教訓だけど、
おそらくものごとは、より深く関わってしまったほうが、つらくない。
わたしがいま取り組んでいる組織の改善も。
遠くで、やきもきするより、関わって苦労する方が、つらくない。
叔母が祖母に時間をかけて、施設のすりつぶしたお昼ごはんを
食べさせ、家からもってきた、ぶどうのゼリーとプリンも
すこし食べさせる。
「おばあちゃん、よかったね〜、大好きなプリンだよ〜」
と声をかけながら、
わたしは、叔母の横で、教わったばかりの体操を続ける。
けっこう、効く。
会社でもやんなよ、と叔母に言われ、
ほんとにやろうかな、と思う。
神奈川の家の電話が鳴るたび、緊張する。
でも、喪服で着るスーツは、あのバーバリのやつにしようと決めてある。
写真も、わたしが差し入れてた花束をもって、
にっこり笑ってるやつが、いいよね、と母と話して、決めてある。
死は悲劇でも、不幸でもない。
生命の季節の最終章だ。
だから、感謝をこめて準備する。
いままで、ありがとね〜、と心の中でくりかえしながら。
ところで、叔母のお店は、叔母の絵のギャラリーにもなっている。
飾られている絵の中に、
きれいな黄色の新作が、新しく加わっていた。
10月の頭に上京して、仕事探しと引っ越しを終え、新しい生活をやっとスタートしました。
食器の美しさと、新作のきれいな黄色の絵に目を奪われました。
体操をしているayuさんを想像しつつ、おばあさまの命を感じながら。
全身麻酔で麻酔がカラダにまわるときにドクン ドクンと
「あーおちていく~」という感覚にドキリとしたけれど、
きっと、
「永遠の深い眠り」というのは、もっと静かな感覚なんだろうな と
逆に思ってしまった。小さな手術だったけれど、
やっぱり命について考えました。
なんてうつくしい器の数々。
幸せを感じます。いつか、見せてね。
素晴らしい!
無事でよかった。
よわっていくとき、命について考えますね。
ほんとによわると考えられないんだろうけど。。
いのちの器として、からだ、大事にしないと
ですね。
検査、今月行きます!