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「ジーナのレストラン」で加藤登紀子さんを聞く。

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登紀子さんのツイッターで、このライブの告知をしていた。


◆お知らせ◆明日8月12日(金)逗子の音霊OTODAMA SEA STUDIOに出演!
「ジーナのレストラン」と題してLIVEをします!!
演出も乞うご期待♪ぜひぜひお越し下さい!


びっくりした。

家の近くの海辺にジーナのレストランが開店するなら、
行かないわけには行かない。



(実際のライブも、紅の豚のジーナの歌うあの
シーンの続きみたいだった。)





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夏休みで海沿いの134号線が混んでいるかもしれないけど、
ジーナのレストランに行くなら、
アルファでいかなきゃ、とおもい、シートをはずす。

聞いていくCDは、「紅の豚」のサントラと
登紀子さんの「シャントゥーズ」。


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完璧だ。。





海岸に出てみると、いがいに空いていて
するすると逗子海岸まで15分くらいで着いた。


するすると逗子海岸の公営駐車場に
アルファロメオスパイダーを入れる。

ホテルアドリアーノに、ポルコが
サボイアを、するすると停泊させるときの気分で。
(↑自分内演出)


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ポルコロッソの飛行艇サボイアS-21には、
フィアットのフォルゴーレという
イタリア製エンジンが積まれているんだけど、

わたしのアルファロメオスパイダーにも
フィアット傘下、純アルファロメオ製の
V6エンジンが積まれている。

このモデルを最後に、フィアット/アルファロメオは、
アメリカのGMと提携したので、
このエンジンが、純イタリア製最後のエンジン。

いつもエンジンをかけるたび、
キュルキュル、ドルルン、ドドドドド
という音を聞くたび、その音の素晴らしさに勇気が出る。
ベルニーニの彫刻や、アマルフィのモッツァレラを思い出す。



68番に停めました。

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ライブがはじまる。


聞きたい、と思っていた登紀子さんの
うたを、ものすごい至近距離ではじめて聞く。


声の、すごい硬質なアタック感、と声量、
でも、響きがつやっぽい。
良質なフォルクローレ。
どっしりとした大地とひろがる海。

アマリアロドリゲス、マリアタナセ、
エディットピアフ、エレスレジーナ、
みんな、生で聞けなかったけど、
加藤登紀子を聞けた。






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登紀子さんは、終戦の前々年、当時の日本の
戦略拠点 旧帝政ロシアの都市ハルビンで生まれた。

そこは革命を逃れてきたロシア人たちが多かった。

敗戦後、加藤さん一家は、日本軍が用意した
収容所にしばらくいて、その後、日本に引き揚げる。
貨物列車に乗せられて。



登紀子さんは1968年にソ連に40日間演奏旅行に行っている。
これは、冷戦下の当時かなりすごいこと。
ナホトカ、ハバロスク、モスクワ、
そしてバルト三国へ。

「そこでうたったのは、シャンソン、ロシア民謡。。
ロシアという風土や文化は私の第二の故郷だから、
体がロシアの空気を知っているという感じ。」
(登紀子さんの著書から)


この旅行の時期にかの地である実話にもとづいて
作られたうたがある。

グルジアの画家、ニコ・ピロスマニは、
フランス人女優マルガリータに恋をして、
彼女が泊まっていたホテルの目の前の広場を
花で埋め尽くした。

貧しい画家が、すべてをなげうって用意した花は、
歌になり、その曲は、のちに、グルジア、ラトビアの独立と
ロシア民主化のシンボルになった。




『ある朝彼女は真っ赤なバラの海をみて
どこかのお金持ちがふざけたのだと思った
小さな家とキャンバス すべてを売ってバラの花
買った貧しい絵描きは 窓の下で彼女を見ていた
百万本のバラの花をあなたはあなたは見てる
窓から窓からみえる広場は 真っ赤なバラの海』





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「百万本の赤いバラ」が一曲目。
(前段が長かった。。)




そして、2曲目。
あのイントロ。


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さくらんぼの実る頃。


歌い出し数フレーズで、ものすごい鳥肌がたった。

これを生で聞くためにいままで生きてきたかも、
と思うほど。




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一瞬でそこがホテルアドリーノのバーになり、

友人が撮った写真で見た
紅の豚の舞台になっているクロアチアの海が青青とひろがった。


そして、パリのレジスタンスの意志と喧騒と疲労も感じた。




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「私が中学のころ、父が新宿でハルピンから日本に帰ってきた
亡命ロシア人のために作ったのがスンガリー。
ハルピンに流れる大河松花江(スンガリー河)の名をいただいた
ロシア料理のレストラン。
だから私の少女時代は、スンガリーのロシア人たちの
喧騒とともにあった。


スンガリーに来るロシア人たちは、例外なく
大酒飲みで大騒ぎ、酔うと大いに踊るの三拍子で、
毎晩がお祭り騒ぎのようだった。
わたしにとってロシア民謡は記憶にないハルピンであり、
父がうたう歌であり、スンガリーで親しんだロシア人たちの
故郷だった。」



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映画「紅の豚」でかかる「さくらんぼの実る頃」は、
このスンガリーでライブレコーディングされた。

あのソ連崩壊の当時、東欧を舞台にした映画を
宮崎駿がつくり、
パリコミューン(フランス革命時の革命的自治団体)の歌「さくらんぼの実る頃」を
主題歌にして、それを加藤登紀子が育った場所で歌う。

その歌を目の前で聞く。

ひとつもうすっぺらくない。
なんて深淵で豊かで贅沢なんだろう。





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登紀子さん、ドレスアップしてる。


あの声で「スタッフがね、“ジーナのレストラン”という
コンセプトでやりましょう、っていうからね、
こんな感じで。。」


ステージには、アドリアーノで歌うジーナや、
ポルコ、マンマユート、なんかの大きな
パネルが置かれている。


「これね、スタッフが、宮崎さんとこに
頼んで、借りてきてくれたの」



“宮崎さんとこ”って言えるひと、
あんまりいない。




「ジーナはね、ほんとうにわたしそのもので、
あとは顔をとりかえればいいくらいで。。笑
やりやすくて、ほとんど、セリフも
スルー(リテイクなし)だったの。

最後のシーンで、決闘のあと、
ジーナがきて、みんなに言うセリフ
「さあ、もう終わったのよ」
っていうセリフの言い方を、
宮崎さんが、気に入ってね、
すみません、もういちど、言ってもらえますか、
「もう終わったのよ」
「いいですね〜、そうなんです、もう終わったんです
すみません、もう一度。。」



でもね、

“飛ばない豚は、ただの豚だ”ってポルコのセリフのあと、
ジーナが“バカッ”っていうじゃない、
あれは宮崎さんに、36回やりなおしさせられた。


わたし、やんちゃな男に、きつく怒れなくてね、
でも、怒ってください、強く、
って宮崎さんに言われて
“バカッ”って何度も。」




この貴重な紅の豚秘話のMCで、
何度か発せられた
生“バカッ”が、なんというかもの凄く色っぽかった。

ああ、貴重なものを聞いた。。




「あとで、わたし、バカッって書いた書を
宮崎さんに送ったの。
そしたら、宮崎さん、その書を、
ジブリの玄関に飾ってね、
『ぼくは毎日、加藤登紀子さんに
怒られているんです』って言ってたんだって。」



こんな色っぽいくて、親密な“バカッ”を
いただいたら、そりゃ、飾るだろう。





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「紅の豚」の企画趣旨で、宮崎さんは、
こんな風に書いている。

「ポルコ、フィオ、ドン・クッチ、ピッコロ、司令官、
ホテルのマダム、マンマユート団の面々、その他の空賊たち、
これら主要な人物が、みな人生を刻んできたリアリティを
持つこと。バカさわぎは、つらいことを抱えているからだし、
単純さは一皮むけて手に入れたものなのだ。
そのバカさを愛すべし、その他大勢の描写に手抜きは禁物。」




“人生を刻んできたリアリティ。”




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ベネゼエラを歌いあげおわったときの
拍手はわれんばかりだった。

イマジンにも鳥肌がたった。




いろいろな土地の響きが奏でられた。

ポルトガルや、南米の響き。



エディットピアフを二曲。


逗子の海岸で、家の近くで、

加藤登紀子さんが、エディットピアフを二曲。。




「2曲目は、ピアフが晩年、具合が悪くて
もう歌はうたえない、というとき、
この曲に出会って、この曲なら、
といって、もう一度ステージに立った最後の曲。」


その曲のタイトルが
ぞっとするほどよかった。

人生の最後の曲。

人生の最後にもうこの言葉があれば、
他のことばや詩や文学もいらないのではと思った。

「わたしは、後悔しない」



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本編終盤ラテンの曲でぐいぐい盛り上げて、
最後は、こんなMC

「ことしは、ゼロからの年ね」


本編最後の曲のサビ。

「つまづきながら生きてゆけ」







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登紀子さんが売れなかった若い頃のはなし。(著書から)

「たとえば、キャバレーに歌いに行くでしょ。
目の前にやくざさんがいて、女の子をひざにのっけて聴いている。

シャンソンとか英語のうたをうたっていると、
なんだ、毛唐の歌か。お前ひっこめ、と言われるわけです。

困ったけど、『わたしは帰れないわ。どうしたらいいの?』
とおもいきって客席に返したんです。
(※この返しすごい)

そうしたら、それまでザワザワしていた客たちが
この女、なに言ってんだ、と静かになって、
ヤクザさんが言ったの。

『だったら、そこで童謡でも歌ってろよ』

わたしは子どもみたいな顔をしてたから、そう言われたのね。
それで、一生けんめい童謡をうたいました。
知ってる歌は少ないから、「七つの子」とか「しゃぼん玉」
「歌をわすれたカナリア」とか、いっしょうけんめい歌いました。

そしたら、目の前にいたヤクザの男たち、
気がついたら泣いてましたね。



炭坑後にできた常磐ハワイアンセンターとか、
お祭りのアトラクション、キャバレーまわりとか、
結婚するまでは何でもやりましたね。
所属していた会社(石井音楽事務所※あのオムレツの石井好子さんの会社)は
歩合契約でしたから、断ろうと思えば仕事は断れるんだけど、
できませんでしたね。

聴衆の心をつかめるような本格プロになろうと思ってたから。」





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「毛唐のうたばかり歌うのか、と言ってくれた人には
ほんとうに感謝してる」と登紀子さん。
それで自分をみつめて『ひとり寝の子守唄』をつくる。

「テレビに出てても孤立感がありましたね。
芸能界のテレビであの曲をうたうと、
私は火消し女なのかと自分で思うほど静かになるんです。
熱気が消えちゃうわけね。

あの日、芸能人がいっぱい出てるステージで
わたしが歌った時も、シーンとしてしまって
盛り上がらないわけ。しょんぼり袖にもどると、
何と森繁久弥さんが立ってた。」

その時の森繁さんの言葉が
登紀子さんの音楽を集約してる。

「君が歌ってたのか。
君の声は大陸の風だ、ツンドラの声だね」




***********************




登紀子さんの著書から要約

森繁久弥さんも大陸から引き揚げた。
彼は映画の社長シリーズで大成功して俳優として地位を確立。
が、その時期に突然、知床で「地の涯てに生きるもの」という映画を撮る。
その映画を撮るために全財産を投げ出す。
知床は、引き揚げ者が吹きだまった土地。

森繁さんの業績の中にはあまりでてこない。

彼が映画の撮影を終えて、知床の人たちと
別れをするときに万感の思いでつくったうた。


アンコールの一曲目「知床旅情」。








***********************





体がその土地の空気を知っている。

人生を刻んできたリアリティ。

わたしは、後悔しない。

ゼロからの年。

つまづきながら生きてゆけ。

聴衆の心をつかめるような本格プロになろうと思ってたから。

君の声は大陸の風だ。






うたは、人間であり、風景であって、
人間は、風景は、うたなんだろうな。






最後の曲の前に、登紀子さん

「いま、月が出ててね、十五夜の前の前の前の満月。
帰りに見ていってね」

出された日本酒を、
かっと一気飲みして、

ビギンの曲。
「パーマ屋ゆんた」


沖縄のサトウキビ畑のあぜ道の風。






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終演後、ビーチに出るとほんとだ。


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かえりは、「紅の豚」サントラを大音量で聴きながら、
湾にそって、アルファで帰る。

気持ち的には、こんな感じ。


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登紀子さんの名著「登紀子1968を語る」の中で
好きなセリフ。


獄中結婚をした登紀子さんにインタビュアーが、
こう聞く。

(それくらい愛されてたんですね)

登紀子さんの答え。
「愛された、じゃなくて、あたしが愛してたの(笑)。」








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by ayu_cafe | 2011-08-13 08:42 | ayuCafeジブリ詩集 | Trackback | Comments(4)
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Commented by 利恵 at 2011-08-14 03:59 x
くぅーっ
なんでいなんでい
なかせるなあ。
;)
Commented by まる at 2011-08-18 00:58 x
ふぅ。
溜め息が出ちゃいそうなほど幸福な時間。
想像出来ました。。。
愛することを知っている女性は、たおやかですね。
きっとこんな時間こそ、本来の時間の在り方なんだろうなぁ。
Commented by ayu_cafe at 2011-08-18 04:54
利恵さん

カッコイイ人間っているんですよね。。


Commented by ayu_cafe at 2011-08-18 04:56
まるさん

たおやかでした。
音楽も、時間も。

たま〜に、こういうことに
出会えたりするので、
日々、あなどれません。。