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自分のつらさに甘んじていないか。 18代目 中村勘三郎 1955ー2012

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中村勘三郎のドキュメンタリー。

渡辺えり子を演出にむかえた創作劇と
古典歌舞伎を同じ日に演じる勘三郎は、
稽古ももちろん、同時進行。
彼は、その古典の稽古の時に、
先輩の老歌舞伎俳優を呼んで、
レクチャーを受ける。
その時の彼の目つきが凄かった。

緊張と、重圧に対峙する
強い意志と、そして、
大御所とは思えない謙虚な精神。

腹をくくって、折り目正しく
現状に立ち向かう。



中村勘三郎は、平成16年に最初の
ニューヨーク公演を行った。
世界の舞台芸術のメッカ、
リンカーンセンターの敷地内に、
平成中村座を建設し、あたり一帯には、
漢字ののぼりをはためかせた。

彼は、オリエンタリズムとしての
伝統芸能というショーではなく、
ドラマを持ってニューヨークに来た。
通し狂言を一本、演出は現代劇の串田和美。
当初、関係者はほとんど反対した。
「やめとけ」「失敗したらどうする」と言われると、
彼は、「失敗したら腹を切る」と答えた。

彼は著書の中で、こんな風に書いてる。
「絶賛か拒絶かどちらかになるような
気がしてしかたがない。」
そして、こう続ける。
「私はだからこそやりたい、と強く思った。」



中村勘三郎のニューヨーク公演を
ニューヨーク・デイリーニースは
こんな風に評した。

「彼は伝統に甘んじていない」



話しの合うひとに甘んじていないか。
他人の不備に甘んじていないか。
日々の忙しさに甘んじていないか。
自分のつらさに甘んじていないか。







※ 以前投稿したものに
書き足しました。
by ayu_cafe | 2012-12-05 07:59 | 中村勘三郎 | Trackback | Comments(4)
Commented by つばき at 2012-12-05 09:10 x
昨日の夜、お風呂に入りながら、「勘三郎さん、まだまだやりたいことあるでしょ?私も、あなたの舞台がまた観たいよ。元気になってね」と真剣に祈った翌日に、彼の訃報を知りました。凄い人を失ったなぁと、心がボンヤリしています。
Commented by ayu_cafe at 2012-12-05 18:36
つばきさん
わたしも祖母がそろそろかもというとき
お風呂でお祈りしてました。
あのお風呂の空間と時間は妙ですね。。


以前、談志さんの生前の特番に
勘三郎さんが出てきて

「師匠が亡くなるなんて、そんなもう
いやだいやだ、さみしい、さみしい」

ってあの感じで本気で顔をしかめてました。


彼のような人間の灯火をからだのどこかの
ろうそくの芯にすこしでもともしていきたいです。
Commented at 2012-12-07 17:53
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ayu_cafe at 2012-12-07 18:39
鍵コメさん
とても貴重なお話ありがとうございます。
そうかあ、そうなんですね。
でも記者会見みていてもすごくそのお話
納得できますね。
しっかりしていた。すごく。
お父さんっぽいなあ、と思いました。
安易なセンチメンタリズム
安易な権威主義
安易なストイシズム
がない。
お父さんっぽいな、と思いました。