生きるというのは、嫉妬と焦燥と挑戦の時間。melencolia. 海峡の朝風が紫の霧を晴らす
海峡の朝風
紫の霧 晴らす
冷え込んだ五月の
蒼白い灯台
目を閉じた方が
そのかたちがわかる
目を閉じた方が
その季節が薫る
象牙色の石を
藍色の波が洗う
船便の手紙の
筆跡の潮騒
目を閉じてさがす
その薫りのありか
目を閉じてすすむ
その薫りの方へ
************************
きのう、帰りの電車で
海峡という言葉にはメロディがあるよな、
とおもいながら
考える人のポーズで、
あれこれメロディを探していた。
これかな、というのが見つかったのが
電車を降りる時。
駅から歩きながら
続きのメロディと言葉を考えた。
途中で、いい匂いの花の香りがして
こんなサビになった。
目を閉じた方が
そのかたちがわかる
というのは、
たけしの番組で
とても小さなものを彫る人間国宝の方が
そのようなことを言っていたから。
象牙色、という言葉は
朝、読んでいた中坊公平さんの本に
西条八十さんのカナリアのうたのこんな
歌詞が出てきていて
いいなあ、と思ったので。
唄をわすれた カナリアは 後ろの 山に 棄てましょか
いえ いえ それは なりませぬ
唄をわすれた カナリアは 背戸の 小薮に 埋めましょか
いえ いえ それは なりませぬ
唄をわすれた カナリアは 柳の 鞭で ぶちましょか
いえ いえ それは かわいそう
唄をわすれた カナリアは 象牙の 船に 銀の櫂
月夜の海に 浮かべれば 忘れた 唄を 思い出す
凄い詞だ。
こんなものと
自分のものを一緒に載せたら
見劣るに決まってる。
でも、いい。
生きるというのは、
こういう凄い作品への
嫉妬と焦燥と
リターンマッチが許された
挑戦の時間だから。