風立ちぬ、のホテルに泊まる。
風立ちぬのホテルのモデルは、
ストーリー的には、軽井沢の万平ホテルだろうけど、
造形的には、ここがとてもちかい。
とくに、テラス側も。
劇中、ホテルのテラスで、ドイツ人のカストロプが主人公に言う。
「ココハ、イイトコロデスネ、
モスキートイナイ、アツクナイ、クレソンウマイ
イヤナコト、ワスレルニイイ
チャイナト、センソウシテル、ワスレル。
マンシュウコクツクッタ、ワスレル。
コクサイレンメイヌケタ、ワスレル。
セカイヲテキニスル、ワスレル」
上高地帝国ホテルは、1933(昭和8)年、
日本が国際連盟脱退を通告した年にオープンした。
当時、日本は国策として「外客誘致」を打ち出し、
各地で外国人向けリゾートの開発に力を入れていた。
そこには外貨の獲得とともに、中国大陸進出で
国際的に孤立しつつあった日本を理解してもらおう
という意図があったという。
http://ameblo.jp/asanoha1130/entry-11587642565.html
文化は、優雅な時間のたしなみではなく、
もうあとがない、というときの起死回生の存在証明のようなものだと思う。
桂離宮も同じ。
関東に政権が移り、力の弱まった京の起死回生の存在証明だった。
経済や政治に対して、文化で立ち向かう、などというのは、
とても非効率で、とても無力な気がする。
でも、結果として、幕府が倒されたあと、
戦争に惨敗したあと、
残ったのは、
後に世界に賞賛される離宮と
高原に威厳をもってたたずむホテルだった。
そこには、ひとつもやわなお洒落さや、やわな美しさはない。
美しくもちこたえてやろう、という凄みだけがある。
文化とは、作品とは、
美しくもちこたえてやろう、という凄み。
朝食にジャムが三つプレートに盛られていて、
そばに、三つスプーンが置かれていた。