

だけどさ誰も見てないんじゃないかな。みんな忙しくってひとのことなんか気にしてないんだよ。好かれようとか上手くやろうとかもういいんだよ。おれはもういい。自分ができることだけを精一杯やっていく。そうやって生きていく。そういうの、情けないか? 昨夜のカレー明日のパン


キツネが言った。生きていると増えてくるんだ。無駄なプライド。無駄な執着。無駄な保身。クマが言った。テーブルに花をいくつか生けて何日か毎に水を取り替えるといいよ。茎と花瓶のぬめりを取って、太い枝には十字を入れる。茎は少し詰めてゆく。疲れた花は間引く。君の憑き物も落ちるよ。きっと。

キツネが言った。ストラスブールの駅を朝早く発つローカル線に乗って、北フランスの田舎町を巡ったことがある。ねえ、君は朝早く起きて、どこまで行った?なにを見た?いつか聞かせて欲しいな。他の話にはあまり興味がないんだ。


クマがムスカリにインタビューした。今日はどんな日だった?すこし背が伸びた。将来なりたいものは?野原。影響を受けたものは?木漏れ日。劣等感は?咲くのに忙しくて。寂しさは?必要。生きる意味と価値は?あまり必要ない。冬に眠り春に咲くだけ。