
老クマは、週に2回ジムへ行き、マイペースでたっぷり泳ぎ、週末は口笛教室に通っていた。先日はジムの後、少し気になったので、心療内科へ行き、鬱かもしれません、と先生に言ったら、自分が鬱だなんて信じないっというひとがたいがい鬱なんですけどね。。と言われた。口笛教室の発表会が近い。

近寄るとふたりはこんなことをささやいていた。いまは進む時です。不幸の理由付けもせず。欠陥の洗い出しもせず。ひたすら進むのです。頭は使わず手で花を植え足で遠くまで行きなさい。頭の良い人達があなたを笑うでしょう。でもあなたは手元の花と足の疲れだけを豊かに感じていればいいのです。

「あなたは、つらく悲しいことをどんどん紐付けて考えてしまう。いいことは紐付かないのに、つらいことはとめどなく思い出せる。過去がすべて悪夢に塗り替わる。ふと、あなたの隣にわたしはいる。わたしはスイーツセットをたいらげてあなたに言う。さ、生きるわよ、あなたの悪夢を。」#魔女の帰郷

キツネは思った。おれは偉そうに普通に生きているふりをして、当たり前のやってはいけないことをして誰かを傷つけてしまう。だからこんな罰を受けているんだろうな。つらくても逃げてはだめだな。出会いに罪はないのだから。

月の幌馬車がお迎えに来た。キツネは言った。でもまだなにもやってない。大角鹿が言った。そんなものですよあなたは。キツネは逃げた。闇から闇へ。泥から泥へ。息がきれて泥の中で思った。おれはこんなものかな。追って来る大角鹿の足音が聞こえた。キツネは息を整え、泥をかき分け闇の中へ消えた。

クマが子ぐまに言った。身体の具合の悪さは、休んだ方がいいよ、って言ってる。不運は、幸運に感謝しよう、って言ってる。みんながきみに何かを伝えようとしている。泣いていると聞こえないよ。それから。花は、この世界に生まれておめでとう、ってきみに言ってる。

「絶望は冷静になれるから好き。幸せはなにかがにぶる。どっちがいいということではない。ただそういう事実があるだけ。絶望は単なる状況だ。わたしはその渦中でもしっかりとした糸で編んだ服で暖をとり、美味しいものを食べ、美しい音楽と本を側に置く。わたしは絶望を言い訳にしない。」
#魔女の帰郷

「すべて失くすと手に入る。ひとりになると出会う。遠くまでいくと近く感じる。闇の色彩。無音の響き。幻想の確かさ。空白の豊かさ。1秒の永遠。ひと部屋の無限。欠落という個性。困難という幸せ。濁という清。嵐の静けさ。囁きの叫び。死という生。いくつ気づけた?生きる面白さに。」
#魔女の帰郷

ねこの病院でねこと順番を待っている。
そうじもしたし、ねこのトイレも洗ったし、ちがやさんとライブと展示のお話もできた。気持ちのいいきれいな光の夕暮れ。夜は製本、発送の用意。明日は梱包材と画材見に行く。庭のアメジストセージ咲いてきた。尊い日常。